羊（ヒツジ）の起源はおよそ 1万年前の新石器時代 にさかのぼります。人類が最も早く家畜化した動物のひとつであり、西アジア（中東）で野生種から家畜化されたと考えられています。
🐏 進化上の祖先
- 現代の家畜ヒツジ（学名 Ovis aries）は、イラン北西部〜トルコ東部、ザグロス山脈周辺を中心に生息していた野生の**ムフロン（Ovis orientalis）**が祖先とされます。
- ヒツジ属（Ovis）は、約200〜300万年前にユーラシア大陸の山岳地帯で進化したと推定されます。
- 近縁種にはアイベックスやマーコールなどのヤギ類があり、ヒツジとヤギは約200〜250万年前に分岐しました。
⏳ 家畜化の歴史
| 時期 | 地域 | 出来事 |
|---|---|---|
| 約1万〜9,000年前 | ザグロス山脈（イラン西部・トルコ東部） | ムフロンが人により家畜化され始める。最初は肉・皮革目的。 |
| 約8,000年前 | メソポタミア文明の黎明期 | 羊毛利用が始まる。織物生産が人類社会を変革。 |
| 約6,000年前 | 中央アジア・北アフリカへ拡散 | 牧畜文化とともに羊が広がる。 |
| 約4,000年前 | ヨーロッパ・インダス文明圏へ | 羊毛産業が交易を支える。 |
| 古代エジプト（紀元前3000年頃） | ナイル川流域で宗教儀式や食用に飼育。 | |
| 古代ギリシア・ローマ | 羊毛衣類が重要な交易品となる。 |
🐑 羊が重要だった理由
- 多用途性：肉（食料）、ミルク、皮革、羊毛を同時に得られる。
- 群れやすさ：集団行動をとるため放牧が容易。
- 乾燥地への適応：水を多く必要とせず、半乾燥地でも飼える。
- 再生可能な資源：羊毛は刈っても羊が死なないため、持続的利用が可能。
🌍 遺伝子研究の成果
- 現代の家畜ヒツジは少なくとも3〜4系統のムフロン集団から独立して家畜化された可能性があるとDNA解析で示唆されています。
- 家畜化に伴い、野生ムフロンにはない白い羊毛・角の退化・従順な性格などの特徴が選択されました。
🪶 象徴と文化
- 古代メソポタミアでは羊は「豊穣」「犠牲」の象徴で、宗教儀式にも用いられました。
- ギリシア神話の「金羊毛」や旧約聖書の「神の子羊」など、羊は文化・宗教に深く結びついています。
📌 まとめ
- 家畜ヒツジは ムフロンが祖先で約1万年前に中東で家畜化。
- 初期は肉と皮革のため、後に羊毛が衣料革命を起こした。
- 羊の家畜化は農耕と並び、文明の発展を支える重要なステップだった。
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